新しい洋服を着た朝、肌に起きた異変

セールで購入した、長く保管されていたと思われる洋服を着て外出した日のことです。早歩きで汗をかき始めたころ、突然、目の下が赤く腫れ、服と触れていた首回りや関節の内側に強いかゆみが出ました。

もともとハウスダストアレルギーがあったため、服に付着していたほこりや、汗、摩擦などが関係したのかもしれません。ただし、この症状だけで原因物質や侵入経路を特定することはできません。それでも、「皮膚は外から入ってくる物質に、どのように反応するのだろう」という疑問が残りました。

食物アレルギーが皮膚から始まるとは?

健康な皮膚には、外部の刺激や異物の侵入を防ぐバリア機能があります。しかし、湿疹、アトピー性皮膚炎、強い乾燥、掻き傷などでバリア機能が低下すると、皮膚に触れた食品由来のタンパク質が免疫系に届きやすくなる可能性があります。

免疫がそのタンパク質を異物として記憶し、特異的IgE抗体などを作ることを「感作」といいます。皮膚を通じて起こる感作が「経皮感作」です。その後、同じ食品を食べたときに、じんましん、腹痛、せき、息苦しさなどの症状が現れる場合があります。

ただし、食品由来成分が皮膚に触れれば、誰でも食物アレルギーになるわけではありません。感作されても症状が出ないことがあり、大人の食物アレルギーがすべて経皮感作で起きるわけでもありません。経皮感作は、発症に関係し得る経路の一つです。

加水分解小麦を含む石けんから分かったこと

日本には、経皮・経粘膜感作を考えるうえで重要な事例があります。加水分解小麦を含む石けんを使用していた人の一部が、その後、小麦製品を食べた際にアレルギー症状を起こしました。小麦を食べた後の運動をきっかけに、じんましんやアナフィラキシーを発症した例も報告されています。

石けんは顔に使われるため、皮膚だけでなく、目や鼻などの粘膜を通じて感作された可能性も考えられています。この事例は、食物アレルギーの感作が「食べることだけ」から始まるとは限らないことを示しました。すべての食品由来成分を含む化粧品が危険という意味ではなく、タンパク質の種類、接触の頻度、皮膚の状態、個人の体質などが関係します。

なぜ大人になって突然発症するのか

食物アレルギーは子どもだけのものではなく、大人になって初めて症状が現れることもあります。その理由は一つではありません。経皮・経粘膜感作のほか、花粉と果物などのタンパク質の交差反応、職業上の継続的な接触、食事と運動の組み合わせ、飲酒や薬剤などが関係する場合があります。

「以前は食べられたから、アレルギーではない」とは言い切れません。一方で、食後の不調がすべてアレルギーとも限りません。症状が繰り返される場合は、何をどれくらい食べたか、いつ症状が始まったか、運動・飲酒・入浴・服薬があったかを記録し、医療機関へ相談してください。

日常生活で意識したいこと

まず大切なのは、湿疹や皮膚の炎症を放置しないことです。保湿は皮膚の状態を整える助けになりますが、保湿だけですべての食物アレルギーを予防できるとはいえません。赤み、強いかゆみ、掻き傷などが続く場合は皮膚科へ相談しましょう。

石けん、化粧品、ヘアケア用品など、肌に直接使う製品にも目を向けてください。すべての食品由来成分を避ける必要はありませんが、使用後に赤み、かゆみ、腫れが繰り返し出る製品は使用を中止し、製品名や成分表示を記録しておくと診察時に役立ちます。食べられる食品を肌に塗り、自己判断で反応を試すことも避けてください。

「食べるもの」と「肌に触れるもの」を切り離さない

食物アレルギーという名前から、私たちは「食べる瞬間」だけに注目しがちです。けれども、その前に皮膚や粘膜で感作が進んでいる可能性があります。食べ物の原材料だけでなく、皮膚の状態や日常的に触れている製品にも目を向けることが大切です。

Food Safety Searchでは、レストランが公表している情報をもとに、避けたい食品からメニューを探せます。ただし、検索結果は診断や摂取の可否を判定するものではありません。これまで食べられていた食品で新しい症状が現れたときは、検索結果だけで判断せず、医療機関で原因を確認してください。呼吸が苦しい、声がかすれる、ぐったりする、意識がおかしいなどの症状がある場合は、様子を見ずに救急要請が必要です。